ベトナム登山記 Vol.3

いよいよナムカンホータオ山へ…

12月4日、いよいよ今日はナムカンホータオ山へ。朝4時半、宿泊したムーカンチャイの宿、Homestay Hoa Thaoのオーナー夫妻がこんな早い時間からパンとオムレツの簡単な朝食を用意してくれた。

朝5時にガイドのKY(キー)がスクーターで迎えに来てくれた。そこからKYの運営する宿兼オフィスに不要な荷物をデポしに行く。

ここでアシスタントのCAU(カウ)が合流。キーと二人で登るものかと思っていたが、カウはナムカンホータオに登ったことがないので今回経験として一緒に行く事になったらしい。二人とも20代〜30代前半くらいのモン族の若者たち。

キーのオフィス、ムーカンチャイトレッキングツアー&ホームステイ

ここからスクーターで登山口まで2時間と少し走っていく。後ろに乗っての2時間は中々こたえる…。

道中に通ったThan Uyen(タンウェン)の町。通学や通勤で6時半くらいから交通量がだいぶ増えてきた。
タンウェンの町を抜けてしばらくすると山間のでこぼこ道を棚田を見ながらどんどんと標高を上げていく。

7時30分、出発してから2時間半ほどで登山口のあるモン族の村に到着した。乗ってきたバイクは村の人の家に下山まで置かせてもらう。

山奥のモン族の村が登山口
村の女性は皆伝統的な衣装を着ている

登山口は村の中の民家の庭先から始まる上に標識も何もないので、ガイドなしだと出だしからいきなり迷う事になると思う…。

これが登山口。標識も何もないので、一人じゃ絶対わからない。

スタートしてしばらくして沢沿いのトレイルになり、何度か沢を渡りながら標高を上げていく。スタート地点の標高は1200m弱。そこから最初の峠までは標高差1100mほど。が、これが笑ってしまうくらいの直登続き。全くもってジグザグはなくて、ひたすら直登なので中々大変。

行きは涸れ沢だったが、帰りは雨で増水していた
少しずつ確実に標高を上げていく

登りながら、キーやカウといろいろな話をする。登山道上に残念ながら結構な数のゴミが目に付く。ペットボトルやプラごみが沢山捨ててある。キーは気にしているようで、帰り道に拾える分は拾っていくとの事だが、とてもそれで持ち帰れる量ではない。まだまだ自然を大切に綺麗に保とうという意識は地域には浸透していないのだろう。

そしてここは国立公園ではあるが、国は何もしてくれないし、レンジャーが見にくる事もほぼないという。地元のモン族の村人達は森にカルダモンを植えてその実を収穫する事が大きな収入源になっているそう。そのために国立公園内の木々を伐採してカルダモンを植えているそうだが、そういった事はお咎めなしらしい。ただ、かつてはアヘンのためのケシ栽培などが行われていた地域が、ケシ栽培が違法になった代わりにカルダモン栽培に変わったため、国もある程度の木々の伐採は大目に見ているらしいとのNational Geographic誌の記事もあった。

National Geographic誌の記事

山仕事を終えて降りてくるモン族の村人達とすれ違う

初日は他の登山者に会うことはなく、山中で会ったのは皆山仕事の村人達。子供連れで山に入っている家族もいた。一人は猟銃を持ったハンターだった。

植えられたカルダモン
山中に点在しているshack(掘っ立て小屋)。村人が山仕事で使う他、登山者にも宿泊用に貸してくれるらしい。
ところどころ、岩場や梯子が出てくる
ようやく峠に到着し一休み

キーはベトナムの標高1位〜15位までの山は全て登ったそうだが、その中でこのナムカンホータオが一番ハードだと言う。時折、どうだ?きついか?日本の山と比べてどうだ?と聞いてくる。確かに直登なのでそれなりにきついけど、技術的に難しいという事もなく、日本のアルプスなどである程度の登山経験があれば、特に問題はない。距離と標高差も、1日目が13km,1400mアップ、2日目が19km, 1300mアップとそこまで大変ではない。

そうこうしているうちに今夜の宿となる掘っ立て小屋に到着。時間はまだ15時前なのでもう少し歩いて翌日に楽したいなと思っていたが、この先に宿泊できるような小屋はないため、山頂から標高差で800m下のここで宿泊をするらしい。

泊まった小屋。屋根があり、火をおこすスペースがあるくらい。普段は山仕事で使用している小屋。
小屋の中にあったカルダモンの実。

小屋に荷物を降ろしてすぐに、キーとカウは炊事用の薪を拾いに森の中へと入っていく。するともう一人、モン族の若者が現れて小屋の中に入ってきた。が、英語が話せないらしく全く言葉が通じない。でも特に気まずいとかもなく、彼は彼で色々と自分の作業をしている。やがてキーとカウが戻ってきてその若者とモン語で色々と話したところ、彼は山の反対側の村から山仕事でやってきたらしい。彼は黒モン族。ちなみにキーとカウは花モン族。他にも白モン族などもいるらしく、言葉はお互いに6割くらいは通じるがわからない言葉も結構あるらしく、その場合はベトナム語でコミュニケーションを取るらしい。

着々と食事の用意が進む
美味しそう

火をおこして料理を作りながら、キーと雑談する。キーの村に電気が来たのはわずか10年前。ただ、料理はいまだに毎日薪で火をおこして料理しているらしい。なのでとても手際が良い。またナタを使って箸も串もサッと作ってしまう。コウヘイは火をおこして料理を作れるか?日本では皆火をおこせるのか?と聞かれる。キーは、こうした昔ながらの生活の方法を失わないように残していきたいと考えているらしい。

料理が出来上がった

鶏肉のBBQ,ご飯、野菜のスープと焼き魚が今日のメニュー。山仕事で来た若者も交えてみんなで晩御飯をいただく。彼が持ってきてくれたモン族版米焼酎?のようなものを分けてくれ、皆で飲み交わす。めちゃくちゃアルコール度が強い…。時折3人でモン語で楽しそうに語り合っている。違う村同士で色々と情報交換したりしているのだろうか。キーたちの親の世代のモン族は自分たちと同じモン族同士でないと結婚が出来なかったらしい。が、今はベトナム語でコミュニケーションが取れるので、モン族以外の人たちとの結婚も増えてきているそう。

翌朝は4時起きの4時半出発にしようという事で、20時過ぎには寝袋にくるまった。横では火が燃え続けているので、標高2000mを超えているが全然寒くはない。明日は雨予報だけど、果たしてどうなる事か..。

Comments are closed.